史上最も鋭利かつ深みへと潜り込ませる、通算5作目となるオリジナル・フルレングス作品。英国シェフィールド出身の4人組、オリジ ナルのスタジオ・アルバムとしては3年振り。
前作から積極的に取り入れているエレクトロな音の刃は、より鋭角に耳から脳内を劈く。センシティヴなピアノのメロディを傷口か ら沁み込ませ、治癒するかの如くジワジワと温めては涙腺を緩ませ、心へと伝わせる。煌めくギターとシンセサイザーは放電するかの 如く浮き上がり痺れさせ、ドラムとベースはボテ゛ィ・ブローの如く五臓六腑にリズムを力強く刻み込ませる。何れをとっても現在の 65daysofstaticにしか表現出来ない、強烈に心地よい一音、一瞬に込められた到達点なのだ。
何より今作では“ムダ”が全くない。絶妙な『間はあるが、隙がない』。冷徹なマシンビートとシンセサウンドで優美に序盤を構成する リードトラックM-2『PRISMS』も、終盤は美しい旋律とフィードバック・ノイズが美しいギターのレイヤーで彩られたり、その他の楽曲 もクレッシェンドで有機的に強弱を作り上げ、絶え間なく覆い被さるビッグウェーヴのような強度の感傷的なメロディが連なる。単な るデジロックに毛の生えたポスト云々な有象無象とは比較対象にすらならない次元なのだ。更にはミニマル・ミュージックやニューウ ェーヴまで飲み込んだスペーシーなサウンド・スケープまで舞い降り、あたかも古来からあった神話を新訳として語り継ぐかのような 神々しさすら感じさせる。余計なもの(音)を一切削ぎ落としつつも、音数を減らしているわけではない時間の芸術である。
安易に集大成という言葉を使いたくない。何故なら彼らが如何に“本物”かという核心へと迫ることが出来る緻密に作り込まれた楽 曲の数々は、更に高みを見上げる彼らの意欲の表れなのだから。今後、大型フェスなどにも数多出演するであろう彼らは、ロックやク ラブなどのジャンルを裕に越え、彼らにしか到達出来ない2010年代ハイヴリッドの究極系を携えて悠然と未踏の地に立っていること であろう。いや、走り続けているだろう。
[TRACK]
1.Heat Death Infinity Splitter
2.Prisms
3.The Undertow
4.Blackspots
5.Sleepwalk City
6.Taipei
7.Unmake the Wild Light
8.Safe Passage
9.Artismal (Japan Bonus Track)
※購入者特典:トートバッグ (数に限りがございます)